フライトデータによると今は北海道上空を飛行中のようだ。連載開始から20年、ついにツアーは海外へ!

2017年1月30日、日本時間17時。俺は今ポルトガルのリスボンに向かっている、ADAが企画した史上最強のイベントに参加している。そう、進行形なのは今回の原稿は可能な限りリアルタイムで書くつもり、だからこの先何が起こるのか見当もつかないし、文章もまとまらないかもしれないけど、一緒に旅をしているようなドキドキ感を共有できれば何よりだ。

まずはこの旅に挑む事になった経緯を説明しておこう。たしか5ヶ月前ぐらいだったと思うけど、ADAから「ポルトガル・リスボン水族館見学ツアー参加者募集!」なる通知が届いたのだ。参加は特約店関係者限定、全6日間の日程で負担費用は○○万円。…いやいやいや、全然無理でしょう、6日間の休みなんて到底確保できないし費用だって先月買ったポンコツニュービートルよりも高額だし問題外だね…とその時は思っていた。

それから数日後、冷静に考えるにつれて一つの事が引っかかるようになってきた。2016年に地元の水族館にネイチャーアクアリウムの展示を嘆願する署名活動を私が中心になって展開したのだけども、多くの人に協力してもらったにも関わらず実現できなかったのだ。その頃は署名してくれた人に本当に申し訳なくて、しばらく落ち込む日々が続いた。

だからせめてもの報いとして、市民団体を立ち上げてこの先の10年、20年次の世代のための礎を築いてゆく活動を始めた。そんな活動の一環としてこのリスボンツアーが役に立たないか?と。

まだ決断に至っていない頃、ADA本社で行われたネイチャーアクアリウムパーティに出席。そこで知り合ったスペイン人のヤゴ氏との出会いが俺の心を突き動かした。彼の話によればヨーロッパも含め、世界的に見ても水族館で創造性の高い水槽展示が少ないと、そして彼も同じ目標のために努力しているのだと。そこで…

「世界は無理として、日本は俺がやるしかねぇな!」と、根拠もなく立ち上がったのであります。

だってさ、世界一の水族館を視察するわけでしょ?地元の行政関係者だって行ってないと思うよ。仮に行ってたとしてもコッチは完全自腹ですからね、これほどクリーンな視察は無いって話ですよ。この先の強力な武器になる事は間違いないね、よし行こう!リスボン行ったる!

と、意気込んだものの、休日確保と費用捻出をどうするか?店はもう誰にも任せられないから仕方がないとして、水槽のメンテナンスを請け負っているクライアントの許可が必要だ。だって、その6日間の間にトラブルが起きてもどうにもならないからね。でも、事情を説明したらどのオーナーさんも快諾してくれた、逆に「絶対行くべきだ」とゲキをもらったぐらいだ。

残るは参加費用、こちらは経営用の予備費や消防団の活動報酬などをかき集めてどうにかクリア。

まだまだ問題はあるぞ、パスポートの期限がとっくに切れてるから再取得しないといけない。前回海外に行ったのは専門学校時代の修学旅行以来、もう20年も前の話だ。熱帯魚屋を始めた後に海外に行くなんて考えもしなかったからね。

市役所に行って再申請、期限はもちろん5年。それでも発行手数料が重くのしかかる…くぅ、たった1回の海外遠征のためなのに。しばらくムダな買い物を控えねば。

そして、大きな問題がもう一つ。俺は英語が全く話せない、サイコロ振れば誰でも受かると言われていた英検4級を真剣に回答して最低ランクで落ちた実力だ。別に今回は団体旅行なので英語必須ではないのだけども、ヤゴ氏と話した時にその必要性を痛感したのだ。その時の会話はどうしたって?当然通訳をお願いしましたよ!

だがもう俺に英会話学校の学費を払う余裕は無い。そんな哀れな俺を神が見ていたのであろう、水槽のメンテナンスに行ったお客さんの家にあの有名なCDがあったのだ!

さっそく翌日から営業中に聞きまくった、1ヶ月間聞きまくった、第1話の再生回数は100回を越えた…するとどうだ!?吹き替えなしの映画が…全然聞き取れねぇ!

何だよこのCD、インチキなんじゃねぇの?

マズイ、出発まであと3ヶ月しかない、何か別の手段はないか?そこで見つけたのが10年も前に発売されたニンテンドーDS用の英語学習ソフト、価格は400円。コレに賭けるしかない!

今度は営業中にだけでなく、休みの日も家で勉強した。夜にファミレスで友人と会う時もテーブルで勉強した、大晦日も正月も欠かさずに毎日続けた。そして…さっき答えてやったぜ。

「チキン オア ビーフ?」

ビーフプリーズ!(誰でも言えるわ!)

これでも頑張ったんだから許してよ、今までの俺じゃソレ言える度胸すらなかったんだからさ。

 


 

まぁ、そんな状態だったのだけども無情にも当日を迎えたってわけ。朝は8時に上越妙高駅から新幹線で東京へ。いつもなら東京へは片道6時間の格安夜行バスで行くのだけども、この先飛行機で17時間も座り続けるらしく、足せばほとんど24時間でしょ?自律神経崩壊なんてモンじゃないですよ。なので、仕方なく新幹線なんです…快適だった。

10時には東京駅に到着、そこからモノレールに乗り継ぐと次第に空港施設が見えてきた。おぉ、これが羽田空港か、スゲェ!

集合時間まで余裕があったので、展望デッキに行ってみた。マジか!?新潟じゃぁ1時間に1本飛ぶかぐらいなのに3分に1本ペースでそこら中から飛行機が飛び交っている!あぁもう、この時点で次元が違う、今そこにいる自分が信じられない。

カルチャーショックで少々ゲンナリした状態で集合場所へ、そこにはもう業界の重鎮達が集まっていた。俺がこのメンバーと一緒に居て良いのだろうか?いや、むしろ光栄に思うべきだ、何といっても今回は同志なのだから。

荷物を預け、出国手続きをする。あの金属ゲートも無事に通過し、いよいよ搭乗ゲートへ。航空会社はドイツのルフトハンザだって、カッコイイ〜!けど知らねぇ。

もう後には戻れない、やるしかない。でも、ちょっと帰りたい。そんな俺の気持ちをへし折るかのように飛行機は飛び立った。

時計を見れば日本時間で20時30分、まだ離陸から5時間か…しんどいよぉ。

 


目の前のモニターでフライト情報のチェックや映画が楽しめる


朝のラビオリ(そんな歌があったような?)

 

飛行機内の時間を利用して旅日記を書きつつ、目の前にあるモニターで映画を観ることにした。まずは「ボーンアイデンティティ」ラストまで観ても2時間も経ってない。次は「君の名は。」まさかこんな所で観られるとは思ってもいなかった、タダで観られてラッキー。だが、この二本立てが終わってもなお到着予定まで2時間を残していた。

日本ならそろそろ夜明けかなという頃、カーテンの奥から料理の匂いが漂ってきた…まさか!?

本日2回目の機内食登場、1回目は日本の夕方ぐらいだったけど、まさかこのタイミングで出してくるとは!しかもガッツリのラビオリグラタンである。徹夜明けの早朝にグラタンなんて高校生レベルだよ、夏休みの早朝ファミレスかよ!?

まさかの早朝格闘を終えた頃、ようやく着陸に向けての準備が始まった。離陸から12時間、これほどの戦いは過去にない。

 


まるでデジャヴのようだ…

 

ドイツフランクフルトに到着!まだ乗り換えなんだけど少しでも地面を歩けるのが嬉しい。しかもドイツといえば愛用のエーハイムとフォルクスワーゲンの母国である。「俺は今、ドイツの空気を吸いながら、ドイツの地を踏んでいる」全然実感湧かないんだけど、とにかく感動だ。

ユーロ圏なので、ここがいわゆる入国手続きという事になるんだろう。乗り換え手続きの途中であの検問みたいなやつが現れた。質問の内容は決まっているし、一度あの「観光です」ってのも言ってみたかったし、順番が回ってきて俺の担当は若い女性だったのだが、パスポートを渡すなり明らかに俺の事を不審に思っている表情をした…。

俺の風貌で、さらにマスクをしていれば怪しいのは認めるけども、それにしても嫌な沈黙が続き、つい目をそらしてしまった時に突然「アー ユー ファイン?」と聞いてきた、えっ!?そんな事聞くの?動揺してとっさに「アイム ファイン」と言ってしまったのだが、その時の俺が相当不機嫌そうだったらしく周りのメンバー含めて大ウケ、そこで入国審査終了。なんだよそれ、全然納得できないんだけど?一気にドイツのイメージが悪くなったのは言うまでもない。

ユーロ圏というだけで互いを近く感じてしまうのだけども、ドイツからポルトガルまで飛行機で3時間もかかるらしい。まぁ、さっきの12時間よりはマシだから頑張ろうと乗り込んだらけっこうボロい、国際線とここまで違うか?エンジンも左側だけ酷くメカノイズ出てるんですけど大丈夫ですか?なんて心配をよそに飛び立った。

さすがにもう寝てるだけでいいや、到着まで休もうと思っていたら再びカーテンの奥から料理の匂いがしてきた。ウソでしょ?3時間のフライトで飯出すの?しかもメーニューは再びラビオリ…半分食ったところでギブアップした(この時辺りから腹の調子が悪くなってきた)。

その後はもう気絶状態だった。目がさめると窓の下にはオレンジ色の夜景が広がっていて、ついに来たんだなと実感する。上空から見る限りリスボンの街灯は全てオレンジ色で統一されているようだ。そういうのって良いよな。
 


空港のエントランスの床に水族館のバナーが…いちいちカッコイイ。


到着早々この有様である

 

リスボン空港到着。現地時間30日23時、日本は31日の朝8時、新幹線乗ってからちょうど24時間!?ちょっとした拷問だよ、もうクタクタだぁ。

ホントは感動に浸りながら移動したかったけど、そんな余力もなくホテルへ連行。明日のためにすぐにでも寝なきゃと意気込んでたら「そこのバーで一杯飲もうぜ!」と、マジか?重鎮ハンパねぇな(日本時間だったら朝酒だぜ?)。ここは聞かなかった事にしてスルーしようかと思ったのだが…いや、どんな事でも首突っ込まなきゃ男じゃねぇ!と参戦、ナイスガイのバーテンとの会話も楽しかったが、やっぱりしんどいわぁ。

部屋に入って風呂を済ませたのが午前2時。7時まで5時間寝られるなと布団に入って…現在6時前。全然眠くありません。今日はリスボン水族館だよ、大丈夫なのか?
 
 
あれから強引に寝ようとしたが30分も休めていなかったと思う。7時のアラームが鳴って、すぐに地階のラウンジで朝食。これが意外に美味かった、同席したメンバーとこの飯が今日のピークだったりして…なんて言っていたのだが、それが現実になろうとは。

その後バスに乗ってリスボン水族館へ向かう、道路渋滞が酷かったがこれでもマシな方らしい、所々で工事が行われているので道路事情も良くない。もっと良くないのは天気だ、朝からずっと強い雨が降っている、聞けばリスボンは年明けからほとんど雨が降っていないらしい、なのに今日に限ってこの天気とは…。

もちろん今日のメインは「水中の森」を見ること。だけどそれともう一つ、館長さんとの握手写真を撮ること!これは我がC.A.O.にとって心強い存在になる、この二つは今回の旅の重要度のほとんどを占めるので、不安で仕方がなかった。不眠の元凶かもしれない。

今回は特別に通常10時の開館時間よりも30分早く入場してバックヤードを見学できる。朝の閑散としたチケットブースを抜けて白いらせん状の階段を上ると展示フロアの入場口が現れた。もうこの時点で参加メンバーの様子が一変し、かなり高ぶっているようだ、改めて同類の人間なんだなと思った。

せっかくなので水槽上部の画像をたっぷりとご覧いただこう
 








 

薄暗い回廊を何度か曲がると水槽の最右部が見えてきた、ストーリー性を重視しているのか?だが最右部の前に立てば中央部を合わせた全景が一気に広がる!

早速堪能したいところだったが、バックヤードは最初の30分しか見ることができないので水槽の上に行くための階段を上る。全長40メートルの水面が続く、波打つ水面下に見えるのは水草の群生と悠々と泳ぎ回る魚群。

「これはもう川だな」

俺が最初に上げた声がソレだ。そう思えるのは規模の影響もあるけども、水槽の上に視線を遮るような補強や機材が無く、まるで川縁に立っているような気持ちになる。上から見るってのも良いね、バックヤードにしておくのはもったいないんじゃないかな?

水槽の裏側のろ過システム等は天野邸の水槽と同じような手法だった、この辺りはすでに確立されているようだ。ポンプはデカかったけどね。

それでは、水景の画像はもうどこにでも掲載されていると思うので、ここではマニアックな部分のみ掲載しよう。
 

誰もいない状態だと神秘的である


水槽の反対側はこんな感じ


巨匠のサインが書かれた石は字が消えかかっていた


環境汚染に関する説明と思われる


収容生物の解説、いちいちカッコイイ。


アマノシュリンプ…まぁいいか。
 
通常の開館時間になってバックヤードから通常のルートに戻り、いよいよ全景を拝見する。フロアには階段状になっている部分があり、そこに座ると水槽を一望出来るようになっている。当然だと思うけど、写真で見るのとはスケール感が違うし、奥行き感も違った。水槽の末端がちょっと霞んで見えるって常識じゃ考えられないでしょ?

この規模なら引いて見るものなんだろうと思っていたんだけど、顔をアクリル面ギリギリに近づけると不思議な感覚に変わる。説明が難しいんだけど、自分が30センチぐらいの人間になって、ADAギャラリーにあるような180センチ水槽に自分が入っているような感覚。写真で見ていた頃は大味な造りなんだろうなと想像していたんだけど、意外とそうでもなく近くから見ても楽しめるのだ。これは意外だった。

う〜ん、よくデキてるなぁ。どこかマイナス要因はないかと改めてネガティブな目線で見てみたけど、石、流木そして葉の表面、どこにもコケ一つない。凄いメンテナンス力、あっ!そうか、ウィローモスがどこにも無かった、流木も全部地肌がむき出しだったな。コケが無いのと何か関連があるのだろうか?

それにしても座りながら無心に眺めたり、水槽の前でポーズをキメて写真を撮ったり、皆んなで思い思いに楽しんだ。巨匠成りきり撮影会も楽しかったなぁ(タイトルの画像はその時に撮った)マジメな顔してるけど、シャッター切るたびに爆笑だったし。こんな水族館が日本にあれば良かったのに…。

 



 
その後、本館を見学。施設の中央には500万リットルを超える容量の超巨大なメイン水槽が設置され、世界の海を再現している。最近の日本の水族館は地元重視の傾向が強いけど、テーマは「世界」なぜなら地球上の全ての海は繋がっているのだから、という懐の深さが好感を持てた。

どの展示も手抜きがなく、水槽の大小に関わらずしっかりと作り込まれている。もっと時間があればじっくりと楽しみたかったのに残念だ。自由時間になったので家族へのお土産を探してみた、広い物販コーナーで買い物を楽しめるようになっており、店員の目が気になりながらも物色してみたが、どれも悩むような価格設定なのだ。手のひらサイズのぬいぐるみで2,500円(ユーロ換算)とか…相当に舞い上がってなきゃそんな値段で買わないだろ?と思いながら何か手頃な値段の物はないかと探した結果、文房具コーナーを発見。鉛筆1本1.5ユーロ…200円ちょっと?タミヤの鉛筆なら1ダース買えるが感覚を切り替えよう、他にボールペンなどを織り交ぜてレジに持って行ったら合計で38ユーロ…ゴ、ゴセンエン!?文房具だと思って甘くみてた…「ビ、ビザカードでお願いします」。

 



ドラえもんのようなマスコットは水族館マスコットの「バシコ」
 

この日の昼食は水族館内のカフェのような店だったのだけども、この辺りからあまり馴染めない料理の「味」が出てきた。言葉での表現は難しいけど、たぶんこの国独特の味、とういうか匂い。ホテルの朝食はとても素晴らしく、何の問題もなかったのが余計に影響したのか、この日の昼食で食べたパスタでソレに気づいてしまったらしい。

スープを一口…う〜ん、続いてパスタ…あぁ、コレは…。まだ残り3日もあるのに。

この後バックヤードツアーも行われたが、普段から水族館に出入りしている私にとっては感動薄く、それでも上から見た500万リットル水槽や高さ5メートルはあろう巨大プロテインスキマーは圧巻だった。

残る使命は館長殿との記念撮影、これは運の良いことに全員で1人ずつ撮ろうという展開になったので難なくクリアできてしまった。できれば水族館に関する事を色々聞きたかったのだけども叶わなかった。俺にもっと語学力があれば可能性があっただけに悔やまれる、市民団体としての俺は本当に頼りなく、ちっぽけだ。

名残惜しいけど水族館とはここでお別れ。この前後の文章は時差ボケにより午前4時頃に目覚めて書いたものです。

 

パッと見は美味そうだが、スープには悶絶した。


巨大水槽上部


館長とその奥様、今後の交流に期待!
 
水族館での玉砕ショックで立ち直るまでしばらく時間がかかった、メンバーの中で俺が急に無口になったのを気付いた人はいただろうか?

空は俺の気持ちを察したのか雨脚はいっそうと強くなり、その後のリスボン観光は傘をさしながらの行動となった。向かったのはたしかジェロニモス修道院というバスコダガマ(ここから先の教養的な内容は信用しないでほしい)が建てたデカイ教会、当時コショウを原価の50倍近くで売りさばき、巨万の富を得たというボッタクリ商売の第一人者である。たしかにデカイし荘厳なんだけども、いかにも「豪華に作りました」という見え透いた傲慢さが俺には全くヒットせず、ヴィンテージか?といえば、それも限度を越えて古すぎ。関心ありそうな顔して解説を聞いていたけど、実は退屈で悶絶していたりする(この状況をジェロニモスシンドロームと命名する)。

巨大な教会の後も水上要塞やモニュメントの遺産ツアーが続きジェロニモスシンドロームに苦しめられたが、時折の救いはクールにパッケージされたワーゲンバスが何気なく船着場に置かれていたりして、ユーロ圏のセンスの良さを学ばせてもらった。

なお、ポルトガルでのガイドさんはガイドブックの編集や、ポルトガルを取り上げたテレビ番組の監修を務める等、裏方ではあるものの、その道では超有名人らしい。だからガイドに関しては面白いぐらいで退屈なんかしないのだ、あくまでも退屈はその対象物に対してである事を付け加えておく。

 

ジェロニモス修道院(世界遺産)


ベレンの塔(たぶん世界遺産)


フォルクスワーゲンタイプ2(世界遺産推奨)


左がその有名な堀さん、右は現地ガイドのPhilippaさん。
 
夕方5時から夕食が始まる7時まで時間に余裕があるということで、希望者のみ市街地散策をするという事で迷わず手を挙げた。ただし、名所ではあるもののスリの被害が頻発するらしく、それなりのリスクがある。ゆえに希望者はたったの4名、それとADAスタッフ2名が加わり6人の精鋭でスリの巣窟へと飛び込んで行った。

空は夕闇に包まれ始め、まさにスリにとっての格好の時間帯なのかもしれないが、街灯の灯り始めた市街地は何とも言えぬ異国情緒を醸し出し俺達を魅了した。360度どこを切り取っても絵になってしまう「いかにもヨーロッパ」の様相は、存分に俺達を楽しませてくれた。
 

奥に見えるのは世界最古のエレベーター「Elevador de Santa Justa」
 
おかげで気分の落ち込みも幾分か軽くなり、このツアー最初の本格的な夕食を楽しむことができそうだ。この日のメニューはバカリャウと呼ばれる鱈の塩漬けがメイン、ちょっとだけ事前に学習した知識によればバカリャウはこの地区のソウルフードで一度は食べてみたかった、そしてもう一つはサングリアという赤ワインベースのカクテルとでも言えば良いか、すでに日本でも流行っているが、やっぱり本場の味を堪能したいのでオーダーした。

まずはサングリアで乾杯!想像よりも少しハーブが効いているみたいだけど、新鮮な果物がふんだんに入っていて美味かった。そしてサラダの次に出てきた特大の白身魚の切身、これぞバカリャウ。こんがりとソテーされて美味そう、念願の実食!

「ウッ…」

あの味だ、昼のパスタ程ではないが感じる、しかもかなりの塩分。まいったなぁ、食えないほどではないが完食は厳しいか?見渡せばどの席も似たような状況、唯一の完食はポルトガルに常駐派遣されているADAスタッフ…さすがである。

箸が進まない分、酒が進んでしまった。酔いしれた私の前に出てきたデザートは見た目プリンで美味しそう。早速いただきま…

「ヴッ!」

甘いなんてもんじゃない、激甘。砂糖が飽和状態まで溶かし込まれている。ポルトガルはいかなる調味料も飽和状態になるまで使わないといけないのか!?さすがに完食は誰も…すでにあのスタッフの器が空になっている!明日にでも血液検査した方がいいぜ。

前日からずっとイマイチ腹の調子が良くないが、続いて本来の予定にはなかった「ファド」というバーへ行くことになった。ファドとはなんぞやと思ったが、行ってみると生歌を聞きながら飲める雰囲気の良い居酒屋のような所で、長い歴史があるらしい。もしかしてここでもジェロニモス(略)を発症するかと思ったが、二人目に出てきた歌手がいかにも関西の商店街にいるようなパンチパーマのオバちゃんで、その熱唱ぶりに笑いを堪えるのに必死だった。他のメンバーは冷静に聴いていたようだけど大丈夫だったのだろうか?そして時折定番の曲を演奏するらしく、常連客を交えての大合唱が繰り広げられてた。終盤は俺らも巻き込まれた。

あまりの具沢山な1日ゆえ、疲労困憊でホテルに帰ってきた。この二日間で1時間しか寝ていないし、これだけ疲れていれば時差ボケなんて関係ないだろうと期待してベッドに入った。

 

バカリャウ…素材自体は悪くないのだ、きっと日本で料理したら絶品だろう。


ファドの様子、この後におばちゃんが登場した。
 
朝、まだ目覚ましアラームは鳴ってないけどスッキリと目が覚めた、えっと時間は…3時半!?まだ余裕じゃん、再びベッドに入って1時間…全く眠くない。仕方ない、日記を書こう。

観光2日目、この日は特に俺にとって何も使命はないので存分に旅を満喫できそう。この日はリスボンから少し離れた地区のシントラという田舎町見学、イナカとは言うものの手が加えられていないリアルリスボンというべきか、情緒のある路地の雰囲気が最高、まるで絵葉書の中に迷い込んだみたいだった。ただし、例によって古すぎる遺物を見た後の話だったが…う〜ん、ジェロニモス!

 

昔は王宮だったらしいが…ジェロニモス!


シントラの街角。町全体が世界遺産になっている、夢のような空間だった。
 
そしてまたリスボン地区に戻り、芳香剤のCMの舞台となった高台の公園で記念撮影。それにしてもリスボンは高低差が大きく坂も多い、飯はイマイチだが、街の雰囲気は本当に抜群だ。

生活感も味わうという事なんだろうか?リスボンの築地とも言えるような市場の散策もあった、買ったものをその場で食べられるシステムなので、ここで昼食かと思いきや昼食はダイニングバーのような店で、ブイヤベースのような料理を堪能…誰もが「やっぱりね」いうリアクション。俺はもう何も食べたくない。

なんとこんな不完全燃焼の状態でリスボンでの全日程が終了してしまった。名残惜しいんだか惜しくないのかわからないけど、とにかく一行は一路スペイン、バルセロナへと飛んだのである。

 

高台の公園、眺望が素晴らしい。


市場の全景、美味しそうな料理が所狭しと並んでいる。


それなのに…何故イモを入れるんだ!
 
隣の国だけにすぐに行けるような気がしてたけど、飛行機で約2時間(機内食はなかった)、搭乗手続きなんかを含めると3時間はかかる。さらに時差が1時間あるゆえ、ポルトガルを午後4時ぐらいに出てもスペイン着は9時過ぎ、夕食は10時からというヘビーな行程だった。

寝不足や疲れ(食い物も?)そして緊張、いろんなものが重なったんだろう、俺にとってこの日の夜が疲れのピークだった。できればその日の出来事を書き納めてから寝たかったのだけども、倒れるようにベッドに横たわってしまった。
 

バルセロナの朝、リスボンとは明らかに様相が異なる。
 
目が覚めて時計を見ると7時手前…この旅で初めてぐっすり寝る事ができたようだ、やっと時差にも慣れてきたのかもしれない、翌日には帰路に就くんだけど…。今日は「スペインにいる知人」に再会するのだ、そう書くとすげぇカッコイイ。

リスボンのホテルはやや郊外にあったけど、バルセロナのホテルは市街地にあり、ビジネスホテルのように目の前が通りに面している。出発の時は朝のラッシュと重なり、ホテルの前の道はクルマとバイクが混在した濁流のようになっている。温かみのある田舎っぽいポルトガルとは対照的にバルセロナは殺伐としているが、それがまたクールで良い。アメリカ文化の原型を目の当たりにする事ができそう。

何と言ってもスペインならサグラダファミリアである、建築に興味がなくともその存在を知っている人も多いと思うが、建築ファンの俺にとってはもはや聖域、死ぬまでに肉眼で見られるとは思ってもいなかった。市街地は7〜8階のビルで埋め尽くされているのでバスの中から周りを見渡す事はできない、そんな中で一瞬の切れ目から天空に突き出た塔が見えた。…スゲェ。

 

なんじゃこりゃぁ〜!?
 
少し離れた所でバスを降り歩いてゆく。まだビルに隠れて全体像は見えないが、そのスケールは十分に伝わってくる。そして正面に着いた時、俺はもう言葉を失っていた。

今まで見てきた人工建造物の中で、ぶっちぎりの最高傑作だね。その様相を言葉で表現する事はもはや不可能「全宇宙全ての生命体がグチャグチャに混ざり合った塊」俺のボキャブラリーではこれが限界。

外見だけでも気絶しそうだったのに、中に入って完全に昇天した。大木を思わせるような石柱が立ち並び、遥か上空の天井からは優しい光が降り注いでいる、まるで森の中にいるかのようだ。ビジュアルは完全に人工物なのに、無機的なストレスを一切感じない。

パイプオルガンが奏でる音色は、複雑な形状をした天井に反響されて体内に染み渡るようなサウンドである。この状態でキリスト教に誘われたら俺は入信してしまうだろう。
 

夢中でシャッターを切るのだが…


この神秘感とスケール感を画像で伝える事は不可能だ。
 
怪しい勧誘には誘われなかったが、幾つかある塔の上を見学できるオプションには参加した。あの建造物にエレベーターってのはどうかと思うが、グ〜っと上った先で降り所は外から見た塔の2/3ぐらいの位置、それでも十分に市街を一望できるし、何よりも窓も一切無い石造りの建造物がこんな高さまでそびえ立ってるなんて信じられない。

塔の見学コースはエレベーターで上った後、自力で階段を下りながら見て行く順路だった。随所にある窓(というか穴?)からは別の塔の彫刻や装飾を間近に見る事ができる。最後は高さ30メートルはあろう螺旋階段を下って行くのだが、螺旋の中心が下まで抜けているのだ。ボールを落とせば下まで落ちる、当然人間も落ちる…。今まで何も起きなかったんだろうか?

残りわずかな見学時間は1人で再び館内に戻り、夢の時間に浸らせてもらった。俺が生きている間に完成したならば再び訪れてたいが、どうやら大人の事情で永久に工事が続くらしい…。

 



あまりの恐怖に壁に張り付くようにしながら階段を下りる
 
昼食はなんとサグラダファミリアから道路を挟んでの向かい側、なんとも贅沢な立地のスペイン料理店。大鍋で炊いたパエリアが登場したのだが、例によってあのテイストなんだろうと諦めながら一口…う、美味い!この店やるじゃねぇか、立地条件だけじゃないなこりゃ。久し振りに完食、朝食以外ではコレが1番のアタリだった(何故かここから下痢がピタッと止まった)。

この日はまさにガウディ三昧、次は彼が手がけた有名な公園。これも行ってみたかったんですよ(公園の名前知らないけど)、園内にある石柱やベンチは一見奇抜なんだけど、不思議と自然に溶け込んでいる。何よりもその本物に触れる事ができ、座る事ができる、もう超感動なんですけど(リスボンとのこの温度差はいかがなものか?)。

その後も彼の設計したアパートメント等を見る事ができて大満足。だが、この日の最も大事な使命はこの後のADAスペインへの訪問だ。ついにヤゴ氏との再会の時が来た、これまでの苦労が報われるのだろうか?
 


レモンを絞るとこれまた美味。なお、メッシにそっくりの店員が運んでくれた。


グエル公園のベンチ、タイルで出来ているが座り心地は最高!


おぉ〜っ、本物だぁ!

 
到着後、早速登場したヤゴ氏を前に某CD教材で習得した挨拶をぶちかます!おっ?ちゃんと通じてるっぽいじゃん?だけども、そこから先の会話に教材は通用しない、流暢な挨拶からいきなり出川イングリッシュに切り替わる。

この4ヶ月間は人生の中で最も真剣に勉強したってぐらい努力した、それでもコレが精一杯だ。でも、俺が4ヶ月間で習得したのは壊れた英語でも話しかける勇気と、その楽しさ。実際に俺はこの旅でできるだけ多くの人と話そうとチャレンジしていた。現地ガイドはもちろん、飛行機の隣の席の人とか。当然誰ともスムーズになんて話せないけど、お互いでなんとか伝えようとするそのやりとりが楽しくて、分かり合えた時は例外なくお互いが笑顔なのだ。まぁ、いつかは完全にマスターしてやるけどね。

※私はヤゴ氏と格闘していたため、ここではほとんど写真を撮れていない。

本日の観光日程はここまで、夕食までの約3時間はフリータイムだそうだ。一応団体旅行なので単独行動は許されないと思っていたが、まさかのオッケー。やったぜ、3時間限定だけどバルセロナで一人旅が味わえる!

解散の掛け声と同時に俺の姿はバルセロナの雑踏の中に消えた。
 

ここがADAスペインであります


店内もスタイリッシュ
 
実はこの旅の中での裏目標というべき使命があり、土産物ではなく国民が普段使いしている物の中でカッコイイ物を買い漁るというもの。食品類はポルトガルで普通のスーパーに寄ることができて、日本にはまずないパッケージデザインの缶詰やお菓子を買うことができた。残るは日用品で、日本で言うホームセンターがあれば最高なんだが、かなりの郊外まで行かないと存在しないらしく、ツアーの一環として「ホームセンター見学」を申し出たのだが即却下されたため、このフリータイムが日用品を手に入れる唯一のチャンスなのだ。

今いる市街地は東京でいう恵比寿のような高層住宅の1階が店舗になっている状況。どう考えてもホームセンターは無いだろう。とにかく悩んでいても仕方がないので歩き出した。治安は悪くないとはいえ最低限の注意はしておく、なるべくカメラを向けたり、周囲を見渡したりせず周りの人の歩くペースに合わせる。周りが信号無視で横断歩道を渡るなら俺も続いて渡る、それでも俺から滲み出る異国感は消せないけど…。

海外での一人旅にはずっと憧れていて、短時間ながらも夢が実現できて本当に嬉しかった。自分の経験にもなるし、記憶に刻まれるような面白い事は大抵一人の時に起こるのである。

30分ぐらい歩いてもそれらしい店がなく、この裏目標の厳しさを感じ始めた頃、電子部品を扱っていそうな雰囲気の店を発見した。入り口近くにはソケットレンチやマキタの工具も見えたので可能性はありそうだ、ためらう理由としては間違いなく観光客は立ち寄らないであろう店である事。どういう反応をされるのだろうか…。

入店…。店員全員が明らかに「コイツは入る店を間違っている」という表情、だからといって動揺を悟られては一層空気が重くなる、店内を見渡せば入り口近くは小綺麗なものの、奥は小さい収納が並んだ棚が壁一面ビッシリと置かれており、まるで秋葉原のマニアックな部品店の様相だった。

探し物は日用品なんだけども、べつに使うためではなく何気なく店に置いておこうと思っているだけなので、見た目だけよければそれで良い。つまり、高額なものだとキツいのだ。

見つけたのはバーコのマイナスドライバー、工具メーカーとしては有名だけど日本ではレンチやキットでの販売がほとんどで、ドライバー単体は珍しいような気がした。グリップもオレンジ色で異国情緒満点。コレは良いなと値段を見たら1番安いのでも6ユーロ(750円)、飾るだけのドライバーなのにタミヤ並みの値段か…しばらく店内をウロつきながら考えたが他に候補もなく、この後こんな店に出会えるかも分からないので、オレンジとグリーンを1本ずつ購入した。

その店から15分ほど歩いただろうか?店先にあらゆる物がゴチャゴチャ置かれた店を見つけた。日本で言うなら下町の万屋か、田舎の売店のような感じ。どことなく周囲の店とは雰囲気が違って怪しさを感じたので、店員と目を合わせないようにそぉ〜っと入って行ったら「オラァ!(こんにちは)」と逆に言われてしまった。今までの店はまず俺から声をかけてきた、それは明らかに見た目外国人が無言で入ってきたら必要以上に緊張を生みそうだから。 でも、ここで感じた怪しさは的中していたらしく、ラジカセからはアジア系の音楽が流れ、並んでいる品物は英語表記ながらもダイソーで売っているような物ばかり、しかも値段は100円以上。ここはハズレと判断し、出る時はちゃんと「グラシアス!(ありがとう)」と言って出てきた。ちなみにポルトガル語でのありがとうはオブリガードである。

そこからさらに歩く事15分、交差点の角地に金物屋であろう雰囲気の店を発見。今度は慎重に外見を見定めて、アジア系ではない事を確認。狭い入口ドアのすぐ左側に初代店主のバァちゃんと、二代目嫁のおばちゃん店長(勝手に推測)がいたのでオラ!と挨拶すると二人とも小声で返してくれた。

この店は大当たりで、工具類から塗料、水道の配管まで揃っておりじっくりと物色…したかったのだが、おばちゃん店長が俺をピッタリとマークして離れてくれない。何も盗るつもりはないのだけども、俺の容姿なら仕方ないよな。それにしても気まずいなぁと思ってたら他のお客がおばちゃんを呼んで店の奥へ行ってくれた。ここぞとばかりに隅々まで散策し、予算とパッケージデザインが両立されていた接着剤に決めた。

レジにいた初代バァちゃん店長に会計をお願いし、2個で500円ほどの些細な買い物にも関わらず「また来てね」言ってくれた。できる事ならまた来たいよ。
 

公園のベンチで休憩、子供が遊ぶ雰囲気は日本と変わらない。
 
ここまで約2時間、ずっと歩きっぱなしで疲れてしまった。カフェがあるような雰囲気でもなく、通りがかりの公園のベンチで一休み。無邪気に遊ぶ子供達を見ながら足をマッサージする。実は東京散策の時も同じような事をやっていた、歩く国は変わっても自分自身は何も変わらないんだな。

夕方6時を過ぎると徐々に寒くなってきた、新潟で例えるなら4月上旬ぐらいの気候で、昼間は暖かいけど夜はまだ寒さが堪える。空も暗くなってきて、一人旅の寂しさに拍車をかける、それにトイレも行きたい。

小さな商店ばかりの街だけに何も買わずにトイレだけという感じではなく、公衆トイレらしきものも見当たらない。どうしようかとウロウロしていたらガラスとコンクリートで作られた立派な公共施設のような建物を発見した。近づくと、どうやら図書館のようだ。
 

図書館?


これが集合場所の「ラス・アレナス」ショッピングモール
 
確信は持てないので様子を伺いながら入ったが、図書館で間違いなさそう。無事にトイレも済ませたが、集合時間までの残り30分を寒い外で過ごすのはイヤだ。しかし、明らかに館内に感じるアウェイ感…ならばと、本棚からテキトーに1冊取り出し、ソファに座っておもむろに本を広げる、フゥ〜ム…。何書いてあるのか全然分かんねぇ。でも本を広げていれば堂々と座っていられるし、静かな図書館なら誰からも話しかけられずに済む、この作戦は見事に成功し、無事に30分を乗り切る事ができた。

集合場所は店の名前と外見の雰囲気しか聞いていなかったのだけども、ちょうど図書館からすぐ近くのところだった。気ままにウロウロしていただけだったけど、偶然方向が合っていたみたい。予定では最後にタクシーに挑戦するつもりだったのでちょっと残念

昔の闘技場を改築して作られた巨大なショッピングモール、その屋上が集合場所のレストラン。定時の7時に店の前に行ったら誰もいない!?マジか、場所間違えたかな?10分ぐらいウロウロしていると、同じく一人旅に出ていた長崎のショップオーナーを発見!あぁ〜良かったぁ。こういう感動も一人旅ならでは。

店の場所は間違いなさそうなので、他のメンバーが来るまで二人でビールを飲みながらお互いの旅話に話が弾んだ。
 

屋上からはバルセロナ市街を360度見渡す事ができる


内部はこんな感じ


スペインの料理はハズレがない
 
無事に全員が合流し、この日の夕食が全員で食べられる最後の食事。スペインショップのヤゴ氏も加わり、このツアーの思い出を振り返りながら食事を楽しんだ。…それにしてもスペインの飯は美味い、ポルトガルがあまりにも悲惨だったから余計にそう感じるのだろうか?

後から知った事なのだが、今回のツアーは事前にADAスタッフが入念にシミュレーションして計画されたもので、食事のメニューに関しては相当苦労したらしい。つまり、滞在中下痢に苦しんだあのポルトガル料理は、アレでも最上級だったって事になる。ツアーの計画って本当に大変なんだね、下見中は下痢じゃ済まされなかった事だろう(合掌)。

レストランから出た後、ヤゴ氏がヒマそうだったので酔った勢いでからんでみた。

ヤゴさぁ〜ん、飲んでるぅ?

「全然飲んでないよ、ビール1杯だけだよ」

俺さぁ、ヤゴさんと話がしたくて必死に英語の勉強したんだぜ。

「そうなの?じゃぁ何か英語で話してみてよ!」

えっ!?えぇ?っと…

何言っていいか分かんねぇ!(←ここだけ日本語で叫んだ)

「無理しなくてもいいよ、もう大丈夫だよ」

いやダメだ、何か言う!

『俺達はアクアリウム魂で語り合うのさっ!!』

「アハハハ。オッケー、確かにその通りだね」

よく覚えていないがこんな感じだったはず。読めばすんなりだけど、お互い相当苦労しながらの会話だった、楽しかったけど。あぁ〜、スペインの夜も終わりか。後はホテルに戻って寝るだけだな。

いや、終わりじゃなかった。この後ホテル近くのバーで北海道、山形、新潟、長崎の4者オーナーによる打ち上げ激論会が行われたのだ!

これまで4日間共に過ごしながらも、旅の空気を壊さぬよう互いに仕事の話は避けてきたような感じだったが、この最後の夜だけは違った。酒を片手に自論をぶつけ合い、この先の生き残り方について真剣に議論した。俺の知らない大人の戦略も教えてもらった。今後も厳しい業界である事に変わりはないであろうが、それに立ち向かう強者が必ず何かを変化させ、面白くしてくれる、そう確信できた時間だった。残念ながら長崎オーナーはほとんど寝ていたけど…。

 
 
最終日、今日も朝までしっかりと眠る事ができた。午後には帰りの飛行機に乗ってしまう、名残惜しいが最後まで存分に楽しんでいこう。

この日の午前中は自然史博物館「コスモ・カイシャ」の見学、博物館というと科学っぽいイメージしかしないけど、この施設はスゴイのだ。1つの施設に宇宙や人類史、物理に化学、水族館に動物園まで理系の分野が全てオールインワンになってしまっている、日本にここまでの施設はない。

地下も含めて5階構造ぐらいの巨大施設に所狭しと並ぶ展示物、1日かけて回らないと全てを網羅できないだろう、残念ながら2時間しか滞在できないため、俺らは水生生物系のみの見学…もったいないなぁ。

主に魚類の生態や行動を観察できる水槽が大小30本ぐらい、これだけでもショボい水族館クラスと同等、さらに60平方メートルほどの面積に再現されたアマゾンの沈水林が見事。木の上には鳥が飛び交い、陸上にはカピバラが闊歩し、川岸にはワニが横たわり、水中にはピラルクなどの巨大淡水魚が泳ぎ回る。さらに川底には馴染み深いテトラ類まで入っている。それらが全て1つの空間に共存しているのだ、これほどのリアリティはないだろう。川底にテトラ類が集まっているのは、もしかしたら身を守るためなのかもしれない、リアリティを追求するからこそ観察できる光景だ。

特別に施設内に入らせてもらったが、高温多湿状態まで再現されており、本当にジャングルを歩いているかのよう。実際に捕食行動も起きるようだが、拘りのレベルが違う。
 


水生生物コーナー…というか、もはや水族館。


熱帯沈水林フロア全景


見えにくいが底面付近に小型のテトラ類がいる


目の前にいます!

 
リスボンの水族館にしろ、スペインの博物館にしろ、ここまでやれば国外からも見学者が来るだろう。そして、限られたスペースでできるだけ地球の多くの事を知ってもらおうというコンセプトが素晴らしい。イルカショーやセコい御当地アピールに躍起になっている日本の水族館が情けなく思える。

最後に物販コーナーに寄ったのだが、製品ラインナップの良さはこのツアーの全行程の中でここがトップだった。どれもセンスが良かったのだが、惹かれたのは風船の空圧を利用して走らせる車のオモチャだ。単純な遊びであるにも関わらず、しっかりとデザインされた車、その色使い、控えめなパッケージ。100円ショップにあるのとは真逆である。100円のは何かに似せたテキトーな車、奇抜な色使い、それでいてとにかく派手なパッケージ、そういう事。

タミヤに出会えなかったストレスがここで爆発したのか、ソレを猛烈に大人買いしてやったぜ。6台買って39ユーロ、この旅一番の出費だが超ゴキゲン。唯一油断したのは生産国を確認せずに買ってしまった事、空港に向かう途中で気が付き、慌てて確認したら…ドイツ製だった、危ねぇ。
 
 
もうコレで本当に終わり、後は帰るだけ。なすがままに飛行機の搭乗手続きを済ませ、出発までの時間を誰もいないロビーの隅で独り過した。

足の親指の爪が変色してきて痛い、それだけ歩き回ったんだろう。でも、それを忘れるぐらいの楽しい旅だった。楽しい思い出しかないのは、それだけ事前に周到な用意がされていたからだと思う、同行してくれたADAスタッフ二人はもちろんだけど、見えない所で協力してくれた人達に本当に感謝したい。

旅は素晴らしい、決して良い事ばかり起こるとは限らないが、今までに無かった自分を引き出してくれる。もしもまたこの地を踏む事が出来るのならば、今度はオートバイで走りたい、俺達のまだ知らないヨーロッパに出会えるはずだ。

スウェルテ!旅に出ようぜ!